コロナ時代における美容室の店販戦略とは?ジャストケアコミュニケーションズ佐藤氏インタビュー
「今は店販が売れる要素しかないです」
そうおっしゃるのは、美容室向けに店販のセミナーや講習会を多数実施し、著書『美容室「店販」の教科書』を出版している株式会社ジャストケアコミュニケーションズの佐藤さん。
そんな佐藤さんにインタビューし、コロナ時代の店販戦略をテーマに、コロナ禍による店販への影響は?何をどう売ったらいいの?今年の年末商戦はどうのぞめばいい?などを順番に教えていただきました!
株式会社ジャストケアコミュニケーションズ 佐藤康弘さん
サロン専売メーカーのナンバー2として10年にわたり組織を率いたのち、2007年9月に独立。翌2008年「店販売上アップ」「後継者育成・幹部育成」「経営力向上」を目的としたJCCアカデミーを開校。現在までに8万人を超える受講生の教壇に立ち、毎年150回を超えるセミナーの依頼を受ける。
セミナー、個人面談、体験型(ゲーム型)研修という3つの教育プランを駆使し、美容界の人財開発を手掛けるトップランナー。完全現場主義者で、すべてが具体論で展開されるセミナー、個人面談に多くのファンがいる。経済産業省より「経営革新等支援機関」の認定を受け、経営コンサルタントとしても活動中。著書に『美容室「幹部」の教科書』(同文舘出版)がある。
目次
コロナによって高まる店販の重要性
コロナによって美容室の店販(物販)への変化はあるのでしょうか?
美容室の売り上げは『技術代金+店販売上』で構成されています。コロナによってお客さんが減ったり来店頻度が落ちたことで技術売上を拡大するのは難しい、でも売上をあげなければいけない、そうなると商品の販売しかありません。コロナでお客様が来なかったり、来たとしても来店の周期が長くなっているため、何か購入してもらわないと売上が全然足りない状態だったんです。そこで多くの美容室が店販しかない、と気づきました。
初期のそのような状態から、今はかなりお客様が戻ってきています。お客様が髪型は自分で作れないし、他では代替えがきかないと気付いたんだと思います。それから少しずつ技術売上も戻ってきていますが来店頻度は変わらず落ちているため、その分の売り上げは店販でどうにかしなければなりません。
技術代金が減ったことで店販の重要性が高まっているのですね。では、どんな商品を店販したらよいのでしょうか?一般的にはシャンプーやトリートメント、ワックスなどヘアケア剤の販売が多いと思いますが。
美容室では基本的に生鮮食料品以外はなんでも売れますよ。昔は最先端の美容と健康グッズを扱っているのが美容室でした。それこそマッサージ器から布団、宝石、毛皮など様々なものを売っていました。今はそういった美容室は少ないと思いますが、例えば食料品でも生鮮食料品は衛生面で気になりますが、生鮮以外の、こだわりや希少性のある調味料や米、お酒などの食料品はよく売れると聞きます。
コロナ禍で需要の高い店販商品とは
このコロナ禍において、特におすすめの店販商品はありますか?
今は自宅で過ごす時間が増えていておこもり需要が拡大しています。ですので『おうち美容』をキーワードにした商品がおすすめです。家で使える美顔器や家庭用脱毛器、運動不足、ストレス、血行障害によるむくみ・たるみ・ゆるみ解消グッズ、コロナ太りで体形が気になる方へボディメイク、ダイエットグッズ、そしてこれからの寒い時期にはおもこりバス(お風呂)グッズも人気になります。
あとは手指の消毒&乾燥シーズン到来によるハンドケアアイテムの需要も高まっていますね。
美容以外の商品だといかがでしょうか?
美容に限らずでいうと、おうちグルメや睡眠もよいキーワードだと思います。外食しない分、家の食事を豪華にする、こだわって料理する人が増えていますし、外に出ないことで疲れずぐっすり眠れない、寝つきが悪い人も多いと聞きます。またアパレルを扱うなら部屋着がおすすめですよ。部屋着と言っても例えばオンラインのMTGに出ても問題ないようなきちんと感もあるゆったりリラックスできる服です。
また価格でいうと、普段はコスパ重視でも今年はスペック重視の方が多く、高単価商品が売れています。総務省が10月9日に出した家計調査では、今年4月~8月での貯蓄率は非常に高い数字になっていて、一方で収入は比較的計画通り支払われているというデータがでています。そして特別定額給付金も出ましたよね。お金はあるけれど使い道がない、せっかくなのでいいものを買いたいという人がいて、実際の美容室でも高単価商品が売れていると聞きます。
さらには来店頻度が落ちたことによる買い置き需要もありますね。次いつ来店できるか分からないというお客様向けに、来店頻度が落ちてしまっても大丈夫なように複数買い置きしておいてくださいね、と提案するとよいですね。
コロナによって始まった新しい習慣を店販に活用する
コロナによって始まった新しい習慣って何か分かりますか?
え、なんでしょう?マスクは必需品になりましたけど…
マスクはこれまでも着用する人がいましたよね。新しく始まった習慣は『体温を測る』ことです。美容室でもお客様が来店された際に体温を測ると思いますが、そこで分かったことは平熱が35度台という低体温の人が意外に多いということ。一般的に低体温は冷えによって血流が悪くなり病気になりやすいと言われています。免疫力向上のためには体温は高いほうがよいのです。(※非接触型体温計は体温が低く出がちです)
そこで体をあたためる商品、例えば遠赤外線のあたたかい部屋着や腹巻、靴下、また健康ドリンクやサプリを提案するのもよいのではないでしょうか?
なるほど、体温を測るという新しい習慣が店販商品のヒントになるのですね!これから年末商戦が本格的に始まりますが、どんな戦略でいけばよいでしょうか?
クリスマスや年末商戦に美容室が店販でどう絡んでいくかですが、今年は多くの人がこれまでの年よりお金を使えなかった1年です。そこで『年末ぐらいは贅沢しましょう』『年末ぐらいは自分にご褒美を!』というキーワードを押し出すのがいいと思います。さらにギフト需要もありますね。今年は頻繁に会えなかった分、身近な人、お世話になった人にわたすギフトとして何か買いたいという需要がより強くあるので、そこに響くような打ち出し方がよいと思います。
お金が使えなかった1年。このように考えると今は店販が売れる要素しかありませんよ!
美容室の店販でディスプレイのコツは?
最後にディスプレイに悩まれる方もいると思うのですが、店販でディスプレイのコツやうまい見せ方はあるのでしょうか?
美容室でディスプレイにこだわることはそこまで意味がないと思います。重要なのはすぐ手に取れる場所にあるかどうかだけ。いわゆるビジュアルマーチャンダイジング(VMD)は効かないです。小売店などでは買い物が目的なのでVMDが効きますが美容室での目的は買い物でなく施術してもらいに行く場所なのでそもそもスタンスが違います。ですので小売店と比べてVMDが圧倒的に効かない。お客様は勧められない限り買おうという気は起きないのです。商品を紹介した後、「その商品はこれなんですっ。」と手早く商品を出せる、見せることができる位置に置いておくことが重要ですね。
確かに美容室に行く目的の第一はカットやカラーなどの施術であって、買い物のために行こうと言う人は基本的にはいないですね。
もっと言うと、美容師が悩んでいるのは店販の切り出し方ではないでしょうか。多くの美容師がお客様に自然に店販を紹介できるストーリーを探しています。
誰でも簡単にできる方法として1つ紹介すると、今月こんな商品がでました!ってDMやLINEをお客様に配信することです。そして来店された際にお知らせを見てくれました?と話しすること。見たと言われたら、「あれ、すごくいいんですよ~」と会話を続けられる。見てないと言われても「そうですか~、実は送らせてもらったのはこれなんですけど」と改めて紹介する。店販の切り出して悩んでいる美容師さんにはDMなどあらかじめ送ったほうがいいよって私はアドバイスしています。
あとは先ほど、新しい習慣として体温を測るというお話をしましたが来店時の検温をきっかけとして体温が低い方には「体温が低めなので体温を上げて免疫力を高めるようにしたほうがいいですよ~あとでいいの紹介しますね!」という感じで話しをすること。問題ない方にも「あ、体温高くてよかったです!体温が低いと免疫がですね…」と話すきっかけにできます。これなら自然なストーリーにできますよね。
先に店販の話となるタネを作っておく、もしくは体温をきっかけに店販の話につなげることができるのですね!今は健康への関心が高まっているので自然な会話として受け入れてもらえそうです。
佐藤さん、ありがとうございました。
コロナ禍での美容室における店販戦略について、おうち美容や買い置き需要、検温からのアプローチなどさまざまなヒントをいただきました。お客様の需要の変化をとらえてそこに適応すること、それによって店販は今後ぐんと拡大させることができそうです!
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